矯正治療を行う副作用とリスクRISK & SIDE EFFETCS
すべての医療行為は生体に大小の変化を与えるため、予期しないor望まない「副作用やリスク」を伴います。(リスクのない医療行為は存在しません。)
しかし、医療行為を行うメリットのほうがデメリットより大きく上回るため、私たちは医療を行います。世界中で広く行われている「矯正治療」にも、この「副作用やリスク」は存在します。
本ページは「副作用やリスク」を正しく知っていただく事により、安心して矯正治療を受けていただく事を目的としています(多項目の説明を行いますが、不安を煽るものではありません)。また、本院では矯正治療診断時に、書面の読み合わせにて代表的な項目の説明を行っております。
もくじ
治療中の痛み
矯正治療中、歯に痛みが生じるという現象が起こります。これは、ほとんどすべての患者様に生じるものです(痛みが生じない方もまれにおられます)。
具体的には歯が浮いたような感覚の痛みや食べ物をかんだ時に歯やその周囲に生じる痛みです。
個人差はありますが、通常3~4日ほどで和らぎ、元の何もなかった状態に戻ります。(痛みに敏感な方は鎮痛薬を服用していただく場合もあります。)この現象は歯に調整を加えるたびに生じるものとなります。自然現象であり、異常なことではありません。
虫歯/歯周病のリスク
成人矯正治療では、固定式矯正装置を主として使用します。
装置構造が複雑なため、食べ物の磨き残しやプラーク・歯石が沈着しやすいです。そのような状況が常態化すると、虫歯/歯周病のリスクが上昇します。
本院では、すべての患者様に矯正治療開始後、歯磨き指導を行っております。また、初回指導後その状態が良くならない場合、複数回の再指導を予定しています。再度の指導に関わらず、状況の改善が見られない場合、矯正治療中断をご提案することもありますのでご注意ください。
ブラックトライアングル/歯肉退縮
成人患者様では、矯正治療の有無に関わらずブラックトライアングルと歯肉退縮が生じる可能性が考えられます。また、矯正治療によりそれが顕著に生じることも考えられます。
「ブラックトライアングル」とは、下記の写真のような歯と歯の間の黒い隙間の部分を指します(歯と歯の間に歯肉退縮が起こった結果です)。
「歯肉退縮」は歯茎の減少そのものを指す言葉ですが、下記の写真のように歯に付着する歯肉の減少を指すことが多いです。(歯が長く見えます)
「矯正治療前に歯肉炎があり、矯正治療後の歯肉炎改善により生じる仕方がない」パターン、
「叢生が強い方や軽度歯周病の方などある程度予想できる、もともと骨量の少ない」パターン、
「矯正治療中に骨減少が起こってしまった」パターンなどがあります。
いずれも事前に避けるべき手段が乏しいのが現状です。
失活(歯髄壊死)
失活とは神経死のことを指し、虫歯や外傷など明らかな原因から生じる場合もあれば、原因不明で突然生じる場合もあります。また、矯正治療が原因で生じる可能性も除外出来ません。発現率は1%もありませんが、事前に避けることが出来ないのが実情です。失活が発覚した場合は将来的には一般歯科での根管治療が必要になります。
歯根吸収
矯正治療前後で比較すると、歯根が短くなる所見が認められることがあります。これを歯根吸収と呼びます。現在、原因は特定されていません(*この歯根吸収は矯正治療がなされない場合でも起こります)。
また、事前に避けることもできません。レントゲン撮影により、目で見てわかる歯根吸収は5%ほどとされています。通常は、生じたとしても歯の寿命に影響がないレベルがほとんどです。治療途中、大きな歯根吸収が発覚した場合、治療方針を変更することもありますのでご注意ください。
顎関節症の一時悪化
顎関節症とは、「顎が痛い」「口が開かない」「顎を動かすと音が鳴る」といった症状のある状態を指します。
その原因は多因子要因(解剖学的要因・習癖行動・咬合・精神的要因・年齢・性別・社会環境)といわれ、それらが一定の負荷値を超えた際、症状が発現するとされています。矯正治療は年単位の期間を要します。そのため、矯正治療途中に種々の要因が重なって、顎関節症が発現することがあります。症状の程度にもよりますが、矯正治療を一時中断することもあります。
矯正治療中の歯科治療
矯正治療は1~2日で終わりません。矯正治療中に何らかの症状(虫歯などによる痛み、要観察歯の治療、歯肉炎、歯周炎、失活など)が生じた際には、矯正治療を一時中断し、一般歯科医による治療が必要となることもあります。
矯正治療後の歯科治療(修復物の再治療)
矯正治療後に修復物の再治療が必要となる場合があります(もともと修復物が古いことによる再製作、咬み合わせの変化によるもの、矯正治療中に修復物が破損した場合、歯肉ラインの変化による審美障害など)。
噛みにくい
矯正治療ではすべての歯の位置を再構築します。そのため、矯正治療中は初診時より噛みにくいのが一般的です。最終的には改善しますので、ご安心ください。
話しづらい
矯正治療では様々な装置を使用します。中でも、舌の空間の一部を占有する「舌側矯正装置、リンガル」は特に不快感が高く、話しづらいと言われています。徐々に緩和してきますが、慣れるまで長期間かかる場合もあります。マウスピース型矯正装置も初めの1か月ほどは違和感があるとされています。装置により一長一短があります。スタッフによくご相談ください。
治療方針の変更/修正
同じような症例に対して、同じ治療を行ったとしても個々の歯の変化には個体差があります。そのため、治療方針通りの経過をたどらない可能性があります。治療方針及び装置の変更がある際はその都度ご説明いたします。
治せなくなる可能性
矯正歯科専門医院であっても何でもできるわけではありません。もともと、100点満点の結果を望めない症例も多く存在します。
診断時に治療の見通しなどをよくお聞きください。ただし、長期間の無断未来院により、治せなくなる状況に変化してしまう場合もあります。長期間来院出来ない理由がある場合、事前にご相談ください。
治療後の後戻り/長期的な変化
矯正歯科治療により歯並びや咬み合わせを改善しても、矯正装置を撤去し何も手を施さないと、歯列は元の状態に戻ろうします。このことを「後戻り」といいます。
これを防止するために、一定の期間、「保定装置(=リテーナー)」を使用することが必要となります(保定期間)。保定期間を経て歯列は新しい配列として安定していきます。
しかし、長期的にみると歯列が一生涯、微動だにしないことはあり得ません。矯正歯科治療後の後戻りでなくとも、歯並びや咬み合わせは加齢(年齢を重ねること)や歯周病の進行などによっても変化します。
しかし、矯正治療を行うことによりその変化も限定的となります。矯正治療自体が無駄になることはありませんので、ご安心ください。
自己管理が必要となる装置
矯正治療には患者様の協力が必要となる装置が多く存在します。その協力無しでは、治らないor治せない症例も多く存在します。
一例としてマウスピース型矯正装置です。1日20時間以上の使用が必要とされており、それ以下の使用時間では治らないという認識を持っていただいても差し支えありません。また、顎間ゴムと呼ばれる補助装置も同様です(こちらは、症例により使用時間は異なります)。
装置毎に使用方法が異なりますので、矯正医の説明をよくお聞きください。使用方法がわからなくなった際には、スタッフにお尋ねください。
その他(転居)
矯正治療は年単位の期間を要します。そのため、治療途中の予期しない転居といった状況に直面することがあります。本院では、患者様が転居する際に以下のご提案をさせていただいております。
Ⓐ転院する
転居先への転院準備を行います。転院資料の作成及び費用の精算を行います。費用は使用した装置、治療の進行状況に応じて算定をおこないます。矯正治療は1医院との契約になります。そのため、本院では治療の進行状況に応じて精算を行いますが、転居先で思った以上の費用がかかることもありますのでご注意ください。
Ⓑ本院での継続治療を行う。
治療が終盤であれば、本院での継続治療を希望される患者様の方が多いです。
※費用精算の基準は以下の通りです。
「装置の種類」と「治療の進行状況および通院回数」に応じて精算いたします。費用をもらいすぎている場合は返金、すでにお支払いいただいている費用が精算費用に満たない場合は追加入金をお願いいたします。なお、使用した装置費用はその期間に関わらず発生いたします。