矯正の精密検査、セファロとは!?BLOG
こんにちは、東京都千代田区の矯正歯科専門医院・神保町矯正歯科クリニック院長の東野良治です。
今日は、矯正歯科専門医院で必ず撮影するレントゲン、通称「セファロ」についてお話しいたします。
正式名称は、「側方頭部X線規格写真」です。
(頭部X線規格写真の一つです。)
「ラテラルセファロ」と呼ばれたりもします。
どのようなものかというと、
このようなものです。
このレントゲンは世界共通の規格写真となっています。
そのため、同年代の平均的なお顔立ちと比べることができるのです。
必ずしも平均値が良いとは言いませんが、比べる対象物がないと顔の評価はできません。
治療のゴールを設定するためには、必須となる資料なのです。
これを撮影せずに矯正治療を始めることはあり得えないといってもいいくらいです。
▶1931年~
歴史を紐解くと、1931年にBroadbentが現在使用されているものの原型となる装置を発表しました。
当時は、頭蓋顔面部の成長発育の研究に用いられました。
その後、1948年にDownsが頭部X線規格写真を用いた顔面形態の計測法を発表し、ようやく矯正治療を目的とした症例分析への応用が始まりました。
日本においては、1954年に粥川、1957年に飯塚・石川が日本人正常咬合者の基準値を設定し、現在に至っています。
▶世界共通の撮影規格です。
(*第3版 『歯科矯正学』より)
・X線管球の焦点―フィルム間距離は165㎝。
・被写体―フィルム間距離は15㎝。
撮影条件はこの距離を守ることです。
そのため、この規格においてフィルムは1.1倍に拡大されることになります。
実際の大きさとやや異なりますので、ご注意ください。
(とはいえ、レントゲンのデジタル化が進んだ結果、実際にフィルムで診る機会も減っています。)
(*当院ではデジタルレントゲンを使用していますので、照射線量は従来方式の1/6~1/10以下に抑えられます。)
また、頭部X線規格写真の撮影方向には3種類(側方、正面、斜側面)あります。
その中でも、矯正歯科の分野で最も広く用いられている撮影方法は「側方」からのものです。
そう、「ラテラルセファロ」です。
通常、矯正歯科医院でセファロ撮影というと、この側面方向の撮影を指すことが多いです。
▶側方頭部X線規格写真「ラテラルセファロ」
矯正治療の方針を大きく左右するのが、このラテラルセファロ(以下セファロ)を用いた分析です。
まず、セファロの硬組織・軟組織のトレースを行います。
そののち、計測点をプロットします。
この計測点は、そのほとんどが従来人類学において用いられていたものを引き継いでいます。
以下、代表的な計測点を列挙します。
興味の無い方は、読み飛ばしてください。
↓
↓トレース
↓
(*第3版 『歯科矯正学』より)
計測点
①S(sella turcica、セラ):トルコ鞍の壺状陰影上の中心点。これは作図的に求められる点です。
②N(nasion、ナジオン):鼻骨前頭縫合の最前点
➂Or(orbitale,オルビターレ):左右の眼窩骨縁最下点の中点
④Po(porion、ポリオン):骨外耳道の上縁の中点。
⑤Ar(articulare、アーティキュラーレ):下顎関節突起後縁と外頭蓋底の交点
⑥ANS(anterior nasal spine、前鼻棘):前鼻棘の最先端点
⑦PNS(posterior nasal spine、後鼻棘):後鼻棘の最先端点
⑧Pog(pogonion、ポゴニオン):下顎骨オトガイ隆起の最突出点。
⑨Ptm(pterigomaxillary fissure、蝶顎裂):翼口蓋窩の透過像最下点。
⑩A(point A、A点):上顎歯槽基底の前方限界。前鼻棘からプロスチオンに至る彎曲の最深点。
⑪B(pointB、B点):下顎歯槽基底の前方限界。インフラデンターレからポゴニオンまでの彎曲の最深点。
⑫Pr(porosthion、プロスチオン):上顎中切歯間歯槽突起の再前点。
⑬Id(infradentale、インフラデンターレ):下顎中切歯間歯槽突起の再前点。
⑭Gn(gnathion、グナチオン):顔面平面と下顎下縁平面のなす角の二等分線がオトガイ隆起骨縁と交わる点。
⑮Me(menton、メントン):オトガイの断面像の最下縁点。
⑯Go(gonion、ゴニオン):下顎枝後縁平面と下顎下縁平面のなす角の二等分線が下顎角骨縁と交わる点。
⑰Ba(basion、バジオン):大後頭孔の前下縁部、斜台の下端部。
もちろん、計測点の一つ一つを覚える必要はありませんが、矯正診断時に登場し、皆様も必ず目にされるものです。
計測点が何を意味するかが分かると、矯正治療もきっと楽しいものとなるでしょう。
次にプロットした計測点をもとに、顎態分析を行います。
分析法には様々なものがあり、矯正学の教育を受けた流派により使用するものには若干の違いがあります。
流派は違えど、矯正治療の目標は同じです。
どれが優れていて、どれが優れていないということはありませんので、誤解がないようにして下さい。
▶例えば、出っ歯も様々!
一口に出っ歯(上顎前突)といっても、様々なタイプがあります。
骨格のタイプとしては
①上顎骨が出ている
②下顎骨が後退している
➂上顎骨も出ているし、下顎骨も後退している
歯性のタイプとしては
Ⓐ上顎前歯が外側に傾斜している(唇側傾斜)
Ⓑ下顎の前歯が内側に傾斜している(舌側傾斜)
Ⓒ上顎前歯は唇側傾斜、かつ下顎前歯は舌側傾斜
つまり、出っ歯は上記の組み合わせからなるため、様々な出っ歯が考えられるのです。
どのタイプの出っ歯なのかがわからないことには、最適な治療を行うことはできません。
そのための、精密検査(→セファロ)なのです。
*受け口(反対咬合)、過蓋咬合、叢生、空隙歯列、開咬も同様です!
▶矯正分析ソフト「Cephalometoric A to Z」
このセファロを分析し、骨格パターン・歯性パターンを把握します。
矯正医の卵の頃は、この分析をすべて手作業で行うのが一般的です。
レントゲンをトレーシングペーパーにてトレースし、それを先輩矯正医にチェックしてもらい、プロット→計測→分析を行います。
手作業だと一つの分析に時間がかかるため、多くの患者様を抱えるようになると分析ソフトを用いるようになるのです。
本院では(株)安永の「Cephalometric A to Z」を使用しています。
このソフトでは、セファロの様々な分析方法に対応しています。
また、平面の分析だけでなく、3Dデータにも対応しています。
▶まとめ
矯正治療を始めるにあたり、無くてはならない「セファロ」。
通常、矯正歯科専門医院には必ずある機器です。
矯正治療を始めようとお考えの医院では、「セファロ」撮影をしていますか?
是非、お問い合わせください。
歯並びでお悩みの方は是非ご相談ください
歯学博士・矯正歯科専門医である東野良治院長が対応いたします。些細なことでも構いません。お気軽にご相談ください。
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投稿日:2016年2月10日 カテゴリー:その他, よくある質問, 医院紹介