睡眠時無呼吸症候群(SAS)と矯正歯科治療~小児矯正でしかできないこと~BLOG
こんにちは、東京都千代田区の矯正歯科専門医院・神保町矯正歯科クリニック院長の東野良治です。
今回のテーマは「睡眠時無呼吸症候群(SAS)と矯正歯科治療~小児矯正でしかできないこと~」です。
「睡眠時無呼吸症候群」
一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか?
簡単に説明すると、睡眠時に呼吸停止または低呼吸状態になる病気のことを指します。
睡眠時無呼吸症候群には3つの種類がありますが、ここでは閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive sleep apnea syndrome) についてご説明します。
「この睡眠時無呼吸症候群と矯正治療に関係があるの?」って思われる方もいらっしゃるでしょう。
それが、実は大いにあるのです。
矯正歯科治療によって、この「病態の予防ができる場面」があるのです。
つまり、矯正歯科治療が睡眠時無呼吸症候群の予防法になりうる場面があるということです。
順を追ってお話します。
不眠って良くないの?
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に呼吸が停止したり低呼吸になる病態です。
おのずと睡眠の質が低下し、不眠状態になってしまいます。
NHKが2000年に行った国民生活時間調査によると 、日本人の平均睡眠時間(平日)は7時間14分とのことです。
1日の約1/3の時間(約7時間)を使って、残りの2/3の時間(約17時間)に備えるわけです。
この睡眠の質低下は、17時間の活動時間の質低下につながるのです。
また、この日中の眠気は命に係わることもあります。
2003年2月、山陽新幹線列車緊急停止事故を覚えておられる方もいるでしょう。重大事故につながらなかったものの、新幹線運転士が居眠りした状態で時速270キロメートルのスピードを出し走っていたというものです。
原因は睡眠時無呼吸症候群です。
この事故をきっかけに、この病気が一躍有名になりました。
日本国内における推定患者数は300万人とも言われており、新幹線運転士やトラック・タクシー運転手など一瞬の居眠りが重大事故に直結する職業についている人もこの中にいることでしょう。
この睡眠時無呼吸症候群は、単に睡眠時間が少ないというものではなく、睡眠の質が問題となるのです。
いびきにご注意を!
「しっかり睡眠時間を取っているのに全然疲れが取れない!」
よく耳にしませんか?
これは、睡眠の質の低下が原因かもしれません。
特にパートナーの方から「就寝時のいびきがすごいよ」といわれたことのある方は要注意です。
睡眠時無呼吸症候群(最近では睡眠時の無呼吸だけでなく、低呼吸も問題だとされています。)は1時間に5回以上この無呼吸or低呼吸が生じ、かつ日中の眠気が生じる場合を指します。
(確定診断は睡眠ポリソムノグラフィ検査(PSG検査)の上、医師の診断のもと行われます。)
思い当たる方は、一度「睡眠外来」に相談されるとよいでしょう。
肥満、顎が小さい人がなりやすい!?
この睡眠時無呼吸症候群は、肥満者は非肥満者の3倍以上の発症リスクがあるとされている。
ちょっと考えていただければ、想像がつくかもしれませんが、太っていると気道が閉塞しやすいですね。
しかし、日本人は肥満でないのに睡眠時無呼吸を伴う症例が多く、肥満以外の病因があるのではないかといわれています。最も有力な病因は顎が小さいといった骨格形態だといわれています。
治療法は?まずは、ダイエット?
睡眠時無呼吸症候群の治療法は病因、重症度により異なり、代表的な治療は以下の4つです。
①生活習慣の是正
②経鼻敵持続陽圧呼吸療法(CPAP;シーパップ)
➂手術による治療
④マウスピースによる治療(口腔内アプライアンス)
①生活習慣の是正
要するに、太っていれば痩せましょうということです。
何といってもこの病気は肥満が原因として起こることが多いため、減量は必須となります。
しかし、ダイエットの難しさは想像に難くないと思います。
食事、飲酒、喫煙、運動といった基本的な生活習慣を見直す努力が必要です。
他の治療法と併用が必要ですが、長期的な視点で考えると必須の項目です。
肥満は睡眠時無呼吸症候群だけでなく、糖尿病、高血圧といった生活習慣病と密接な関係があるため、他の病気予防にも効果ありです。
②経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP;シーパップ)
CPAPは鼻から一定の圧を加えた空気を送り込み、その圧で気道の閉塞を取り除き、無呼吸状態を解消する治療法です。睡眠時無呼吸症候群のほとんどのケースに有効です。
最も有名な治療法ではないかと思います。
個人差はありますが、多くのケースで比較的早く治療効果が表れるのが特徴です。
しかし、気道が閉塞しないように物理的に圧をかけているだけで、根本的な治療ではありません。
病因が肥満であるケースではCPAPだけではなく、当たり前ですが肥満の解消が必要となります。
➂手術による治療
肥満要因ではなく気道閉塞が起きている場合にも睡眠時無呼吸症候群が生じる場合があります。
肥大したため狭くなった気道を広げるために、口蓋垂・口蓋扁桃・軟口蓋の一部を切除する方法です。
気道がボリュームダウンし、気道の閉塞が起こらなくなります。ただ、再発・手術の副作用もある場合があり、第一選択の方法ではないケースが多いようです。
④マウスピースによる治療(口腔内アプライアンス)
主に軽度症例に用いる治療法です。睡眠時無呼吸症候群と診断した医療機関から一般歯科医院へ紹介されてくるケースが大部分です。
様々な形態のものがありますが、就寝時お口の中に装置を装着していただきます。装置を装着すると下顎と舌が前方に固定され、気道が広くなります。
軽度の症例はもちろんのこと、肥満が見られない下顎が後退している重度症例にも効果が見られるといわれています。
成人の睡眠時無呼吸症候群治療に関しては、松翁会歯科診療所(@大手町)を提携医療機関としてご紹介しています。
そちらの診療所では、これまでに約1000症例もの成人睡眠時無呼吸症候群マウスピース治療を行っています。
日本有数の症例数を誇る診療所といえるでしょう。
*上図はマウスピース装置およびマウスピース使用による気道変化を示す模式図です。松翁会歯科診療所からお借りしました。
よくわかる動画はこちらです。
矯正歯科治療の活躍する場面は?小児期が効果的!
現代人の顎は、はるか昔の人類と比べ小さくなっているといわれています。
顎、特に下顎の小さい方を見かけることがありますね。
おそらく子供の頃も下顎が小さかったのでしょう。
一般的に小児期の矯正治療では、下顎が引けている上顎前突(出っ歯)症例では、下顎の成長を前方に促す装置を使用します。
なぜなら、小児期(特に小学生の間)は顎の成長が期待できるからです。
そうすることによって、上顎と下顎の前後的バランスを補正するのです。
成長を利用できる小児矯正ならではの治療です。
これは、大人になってからでは期待できない治療法です。
もちろん、いくらでも下顎の前方成長を促せるわけではありません。
症例に応じて的確な診断が必要となります。
どんな装置かな?
装置は大きく分けてカスタムメイド矯正装置とプリフォームド矯正装置(既製品)があります。
カスタムメイドタイプの代表的な装置には「バイオネーターBionator」があります。
下の動画がバイオネーターです。
カスタムメイド(オーダーメイドの装置)のため、患者様ごとに型どりをし、装置を製作します。
通常、就寝時に使用し、下顎の成長を前方へ促します。
プリフォームドタイプの代表的な装置に「トレーナー」と呼ばれものがあります。
既製品のため、形は決まっているのが特徴です。また、柔らかいシリコン材料であることも特徴の一つです。
カスタムメイドタイプ装置とは若干の違いはあるものの、下顎の前方成長を促す効果を持ち合わせています。
症例にもよりますが、本院ではプリフォームドタイプ矯正装置「トレーナー」を比較的多く使用しています。
詳しくは HP(機能的矯正装置「トレーナー」とは)をご覧ください。
まとめ
日本人における睡眠時無呼吸症候群の病因は肥満だけでなく、下顎の後退を主体とした骨格的な要因も病因の一つと考えられています。
そのため、下顎位を変化させる装置が有効と考えられているのです。
成人では骨格性不調和の改善は行えませんが、小児期は下顎の前方成長を促す作用によりもう少し踏み込んだ改善策になりえます。
お子様の下顎が後退しており、かつ就寝時のいびきをお悩みの際、「矯正歯科」も選択肢の1つとして思い浮かべてみてください。
歯並びでお悩みの方は是非ご相談ください
歯学博士・矯正歯科専門医である東野良治院長が対応いたします。些細なことでも構いません。お気軽にご相談ください。
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投稿日:2015年9月6日 カテゴリー:☆☆人気ブログ☆☆, 大人の矯正治療, 子どもの矯正治療, 歯並び・かみ合わせ・矯正治療