矯正歯科クリニックで撮影するレントゲンの放射線被曝量についてBLOG
こんにちは、東京都千代田区の矯正歯科専門医院・神保町矯正歯科クリニック院長の東野良治です。
歯科にかかると、必ずといってもいいほど撮影するレントゲン。
レントゲン撮影にこれまでさほど意識していなかった人も、2011年3月11日の東日本大震災原発事故以降、気にされるようになったようです。
それに伴って、レントゲンの被曝量に関して質問を受ける機会が増えました。
今回は、「矯正歯科クリニックで撮影するレントゲンの放射線被曝量について」をテーマと致します。
放射線被曝にも様々な分類・種類があるため、正しく理解していないと混乱の元となります。
分類ごとに一つずつ見ていきましょう。
▶1.線源による分類
~実はレントゲンを撮らなくても被曝しています!!~
放射線被曝は線源により大きく分けると2つにわかれます。
自然放射線による被曝と人工放射線による被曝です。
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①自然放射線 → 2.4 mSv/年(世界平均、UNSCEAR 1993 Report)
宇宙線
大地放射線
体内放射線(ラドンを除く)
ラドンとその壊変産物
etc.
②人工放射線
放射線放出製品 (陶磁器、ガラス、テレビ等)
放射性廃棄物(原子力発電所から)
医療用放射線(エックス線診断が主)
etc.
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①自然放射線
実はレントゲンを撮らなくとも、日常生活を送っているだけで放射線被曝をしているのです。
意外と知られないことですが、事実です。
宇宙線や地殻など自然界からの放射線です。
低量ではありますが、避けることのできない被曝です。
その量は国(地球上での位置)により異なります。
世界平均2.4mSv/年といわれています。
②人工放射線
これは人間が人工的に生み出した放射線のことを指します。
「人工放射線=悪」
ではありません。
不必要な被曝は良くありませんが、多くのメリットを享受できると判断した時、人工放射線を使用します。
例えば、医療現場です。
多くの検査で必要なレントゲン撮影。
人間の目では、人を透視することができません。
レントゲンの特性を利用し、視診では見えない部分を映像化する技術です。
多くの医療行為は、医師・歯科医師免許を持たない人が行った場合、傷害罪に問われるように、体に侵襲を加えるものです。
レントゲンを使用し、正しい診断を行えないと非常に危険な行為になってしまうのです。
ただし、後述しますがレントゲン撮影による放射線量はごくごく微量です。
また、癌治療などに用いる放射線治療。
放射線治療に用いる放射線量は大きいのですが、現在は機材の進歩もあり、必要な部位(癌細胞)への限定照射を行うことができるようになっています。
これも被曝量とメリットを天秤にかけたときに、照射するメリットが大きいために用いています。
次に原子力発電。
これも人間による人工物です。
本ブログの主旨とは関係性が低いため割愛します。
▶2.被曝対象者別分類
~被曝対象者ごとに線量限度は違います!!~
日常、多くの患者様と話をしていて気づいたことがあります。
どうやらこの項目に患者様の多くの誤認識が存在しているのではないかと思います。
被曝対象者によって「線量限度」が異なるのです。
(「線量限度」とは個人が受ける放射線被曝量をできるだけ抑えるために設定された基準線量値です。)
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①公衆被曝 → 1mSv/年
自然放射線による被曝(2.4mSv/年)・医療被曝を除く
②職業被曝 → 20mSv/年(5年平均、単年度最大は50 mSv/年)
医療従事者、原発関連施設従事者
③医療被曝
レントゲンによる検査(歯科、医科にて)
放射線治療(癌治療など)
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①公衆被曝
公衆被曝の線量限度は国際放射線防護委員会(ICRP)によって年間1mSvと勧告されています。
公衆被曝とは、職業被曝と関係の無い方の人工放射線被曝を指しています。
これには、医療被曝も前項の自然放射線被曝(2.4mSv/年)もカウントされません。
②職業被曝
職業被曝とは、医師・歯科医師など医療従事者および原発関連施設従事者の被曝を指しています。
職業被曝は一般の方の公衆被曝よりも線量限度が高く設定されています。
その数値は20mSv/年(5年平均、単年度最大は50 mSv/年)です。
個人的には少し高いのではないかと感じていますが、これも国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告です。
③医療被曝
医療被曝とは検査などの目的で行う「レントゲン撮影」と癌治療などで使用する「放射線治療」のことを指します。(人工放射線です。)
この医療被曝は公衆被曝・職業被曝の線量限度とは別カウントです。
もちろん、必要性があり(放射線照射の正当性)、防護の最適化がなされているときのみ行います。
矯正歯科クリニックで関係するのは「レントゲン撮影」の項目ですね。
▶ここまでをまとめると
ここまでをまとめます。
年間被曝限度を、「一般人」と「職業従事者」に分けるとわかりやすいのではないかと思います。
成書による分類ではありません。ご注意ください。
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一般人 =自然放射線被曝(2.4 mSv/年)
+人工放射線被曝(1mSv/年) + 医療被曝(+α)
職業従事者=自然放射線被曝(2.4 mSv/年)
+人工放射線被曝(20mSv/年) + 医療被曝(+α)
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*医療被曝は別カウント。
いかがでしょうか?
わかりやすくまとまったのではないでしょうか?
それでは、矯正歯科クリニックに関連する医療被曝についてもう少し見ていきましょう。
▶矯正治療の精密検査に必要なレントゲン放射線量はごくごく微量!
▶実は飛行機に乗る方が被曝している!
矯正歯科クリニックで撮影するレントゲン放射線量をその他のものと比較してみていきましょう。
どのレントゲンも必要性があって行うため、その大小を比較すること自体ナンセンスかもしれません。
しかし、ご自身が受けられる被曝量を知ることも大切なことです。
参考にしていただければと思います。
下の表は「自然放射線被曝」と「医療被曝(歯科と医科)」、「航空機搭乗者の被曝」の実行線量を表したものです。
分類区分が違う項目です。
頭の中を整理しながら比較してください。
数字は文献から引用しています。
このうち、歯科で用いるレントゲンは、デンタル・パノラマです。
医科の検診で用いるものと比べても、低い数値です。
意外と知られていないのは一番下の項目「航空機搭乗者の被曝」です。
成田~ニューヨーク間を往復すると、なんと0.2mSvも被曝します。
矯正治療の精密検査で照射される放射線量よりも多いのです。
あくまで、レントゲン撮影は必要に応じて最小限にとどめますが、被曝線量自体はごくごくわずかだと認識していただいて問題ありません。
*詳細は国際放射線防護委員会(ICRP)P16の報告 をご覧ください。
▶被曝量はどの程度なら安全か?
絶対安心安全の被曝量という線引き(線量限度)はありません。
あくまで人間が定めた目安です。
しかし、線量限度の目安は人類の健康を守るためには重要な指標と言えるでしょう。
線引きの根拠は、国際放射線防護委員会(ICRP)が主に広島、長崎の原爆被爆者のデータを解析した結果によるものです。
▶まとめ
医療現場とは切っても切り離せないレントゲン撮影。
安全な医療行為を行うためにも、レントゲン撮影などの精密検査は絶対に必要です
逆に検査無しでの治療は非常に危険な行為だとも言えます。
当院では、最新のレントゲン機器を用い、もともと低被曝ですが必要最小限の線量になるよう心がけています。
どうぞ、安心して治療をお受けください。
歯並びでお悩みの方は是非ご相談ください
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投稿日:2016年1月4日 カテゴリー:☆☆人気ブログ☆☆, その他, よくある質問